一番奥の部屋に案内され、ドアを開けてもらうとそこは旅館の一室のような豪華な内装だった。
 窓からは中庭が見え、上品にライトアップされ竹や草花が綺麗輝いていた。部屋はもちろん畳で大きなテーブルがあり、座椅子にはフワフワの座布団が置いてあった。
 しかし、座布団の位置が問題だった。


 すでに色は来ており、「やっと来たな。」と、少し退屈そうな顔で出迎えた。スタッフに「一時間後ぐらいに準備してくれ。」と伝えると、そのまま着物の女の人はゆっくりとお辞儀をして退室してしまった。


 「そこに突っ立ってないで早く座れ。」
 「はい………。」
 

 座椅子は部屋に2つ準備されていた。もちろん、1つは彼が座っている。普通ならば、もう1つは向かい合う場所に置いてあるはずだが、何故か色の隣に置いてあるのだ。
 これは、どういう意味だろうか?
 座椅子に座るなと言うくだらない意地悪をする人ではないはずだが………。

 迷いながらも、向かい側に座ろうとすると。
 

 「おまえな、なんでそっちに座るんだ。座椅子はここだ。こっちに座れ。」


 座布団をポンポンッと叩いて、色は座れと促している。有無を言わせぬ鋭い視線で。


 「向かい合ってでもいいと思うのですが。」
 「家庭教師と言ったら、並んで座るものだろ?」
 「…………どんなイメージなんですか。」


 ため息をつきながら、諦めて色の隣に座る。
 バックの中から、本や辞書、筆記用具などを出してテーブルに並べ立て。
 

 「じゃあ、さっそく始め………。」


 そこまで言ったところで、近距離に座る色の手がこちらに伸び、髪に付けていたリボンに触れた。