「はぁー、、、弱いな~、私って。意気地無しだ。」
そう独り言を言ってベットに横になった。
もう5月のゴールデンウィークが終わり、過ごしやすい気候が続いていた。
職場から歩いて帰ってきた翠は、暑さを感じて窓を開けていた。時より部屋に入ってくる夜風がとても気持ちよく、翠は少しの間ベットで体と心を休めた。
うとうとしそうになる体に鞭をうって、目を開ける。すると、キラリと光るものが視界に入ってきた。右手の薬指にしている指輪だった。シルバーのリングで中央には大きなエメラルド1つあり、部屋の照明を受けてキラキラと輝いていた。
「お婆ちゃん、どうすればいいと思う?」
翠は右手を軽く上げて、寝たまま指輪に話し掛ける。誰かに見られたらとても恥ずかしい行為なのかもしれないが、翠は不安になったり心配事がある度に、こうやってエメラルドの指輪に語りかけていたのだ。
「良すぎる条件だと思わない?でも、冷泉様は怖いけれど。」
翠はあんな強気な俺様を目の前にしたことはなかった。アニメや小説、ドラマの世界だけだと思っていたが、やはりモデルになるような人が現実にはいるのだと、改めて思った。
「でもね。お婆ちゃんが教えてくれたギリシャ語、綺麗だって褒めてくれた。、、、嬉しいんだ。私はお婆ちゃんみたいに話せてるかな?」
もちろん、指輪からは返事はない。
けれど、指輪の緑や黄色などに変わりキラキラと光る宝石を見ているだけで何故か安心するのだ。
輝く様子は、お婆ちゃんのキラキラとした笑顔にどこか似ている気がしたのだ。
「悩んでるつもりだけど、きっと心の中では決まってるんだよね。私やってみる!仕事のつもりなら、挑戦するべきだよね。」
そう決心を告げると、指輪が一番に光った気がして、翠は一段とやる気が出てきたのだ。