すると、満足そうに微笑んだ色は、ソファの背もたれから体を起こし、組んでいた足の上に手を置いて、ニヤリと微笑んだまま言葉をつむいだ。
「おまえに一目惚れした。」
色はきっぱりとそう言い翠を見つめた。
突然の告白に、翠はドキリとして顔を赤らめてしまった。相手は、有名な社長で、綺麗な顔立ち、そして色気のある着物まで着ているのだ。そんな相手に言われたらドキドキしてしまうのも仕方がない、と思うようにした。
だが、相手のことをほとんど知らない状態で、そのような事言われるのは、翠が苦手とする事だった。見た目だけ見て判断されるのは、一番嫌いなのだ。
「すみません。外見だけでそう判断されるのは、あまり好きじゃありません。」
きっぱりと言いつけると、色は少しビックリした表情を見せたが、その後にくくくくっと、笑いを堪えるように声を洩らしていた。
「な、何が可笑しいんですか!?」
「おまえ、何を勘違いしている?」
「え、、、。」
「俺が一目惚れしたのは、おまえが話すギリシャ語だ。」
それを聞いて、翠は全身が真っ赤になるほど恥ずかしい思いをしてしまった。自分の容姿に自信があるように思われてしまうだろう。しかも、色にかなり失礼なことを言ってしまったのだ。考えても見れば、大企業の社長が、こんなスタッフの娘になんか惚れるはずもないのだ。
ニヤニヤと笑いながら、「すみません!」と汗をかきながら謝る翠を見ていた。内心では、「この人、絶対わざと言ったんだ!!」と、罵っていたが。
その後、「話の続きだ。」と言って色が話を始めた。