この出会いは”運命”か”悪戯”か。

または”必然”か”偶然”か。




「…お、お母さんっ!!」

これは、あたしたちが離れてしまう前の話だ。

「うそ、でしょっ!しっかりして!」

足に怪我を抱えたまま、道路に出てしまったお母さんは自転車とぶつかり、大怪我をした。

……そのとき、あたしはお母さんと2人きりだった。

「……大丈夫?」

何も出来ないあたしに、優しく手を伸ばしてくれたのだった。

それがあたしの初恋で、初めて醜い姿を見せてもいいと思えた人物だった。

その後、その人のおかげでお母さんは一命を取り留めた。





「……また、あったね」

銀色の髪、優しいブラウングレーの瞳。

滲み出る優しさ。その全てを、あたしは追い求めていた。

その人は、あたしよりもひとつ上だった。

優しく微笑んで、それから王子様みたいな手つきで座り込んでいたあたしを起こしてくれる。

出会った時から、あたしはあなたが好きだった。



「姫凛。好きだよ、大好き」

口はあたしへの愛をかたり、手は永遠に離れないように繋いだまま。





だけど、あの日。


あたしの毎日は生ぬるかったのだと知らされた。




「……は?そいつ誰?誰かの女?俺に馴れ馴れしくするな」




「……俺が忘れたやつって……こんなにも思うだけで苦しい相手は、お前なのか?」






過去と未来。




あたしは彼を救うために、あの人の手下になった。

いつか、きっとあたしを思い出してくれるから。

その気持ちだけで、あたしはあの人の傍にいる。

だけど、彼はあたしを思い出さない……