その名を呟いたのは、あたしではない。

小さく、震えた声。……だけど、的確である。

救急車がきて、あたしたちはなぜか何も無く食べ物屋さんにきている。

「……ここは?」

繁華街のはずれ、路地裏の奥。無駄にキラキラとしたお店が構えていた。

「光華でサンフラワーだ。」

気だるそうに櫂茉が呟いて、みんなカランカランとなる鈴を鳴らして店に入っていく。

「心配しなくても大丈夫だ。ここは先代の店だからな」

…玻取、あたしは別に心配してないんだけどね。

お店の中は広々としていて、ヨーロッパ調となっている。

「…あっれー。随分とそっくり2人がいるじゃねーか」

「統(みつる)さん、こんにちは」

厨房から出てきたのは、黒髪のキリリとしたイケメン。

その人に、雛は声をかける。……雛はここにも来てるんだ。、

「雛ちゃん、その人は?」

「私の姉の姫凛です」

「へーよろしく。俺は統だ。」

ニカッと歯を見せて笑いかけてくれる統さん。

彼らはそんなあたし達を他所に、席に堂々とすわる。

「みんな来てたのねー」

さらに出てきたのは、ふわふわ系の可愛い女の人。

「茉紀さん。こんにちはー」

この人は茉紀さんというらしい。

「統さんはパスタの職人だよ」

それだけいって、メニューを渡してきた紫土。