「雛凛といるのは、ミナミじゃね?」

珍しく、つんつんした感じを持ちながらあたしに答えてくれた。

「ありがと、……櫂茉。」

櫂茉が答えるとは思っていかなったから少しびっくりした。

大体、彼らの性格は今のでわかった。

総長は……瀬吏か紫土。貫禄があるのはこの2人かな。

「着くぞ。」

それだけの紫土のことば。窓の外には既に人だかりができている。

……あー、出たくない。これはきっと『きゃー!』とか言う女子の黄色い歓声が収まらないタイプのやつだよね?

右のはしに、いた紫土が勢いよくドアを開ける。

目立ちすぎる黒のバン。ドアをあければ、声にあたしは耳を塞ぐ。

「……るっさ、」

こんな待ち構えて……この人たちはどこぞのアイドルかっつーの。

いや、アイドル級なんだろうな。全員顔だけはいいもの。

「それ、昨日も言ってたな。」

少し笑ってあたしの頭を撫でた玻取。その顔はやさしい。

あたしは初めての高校に入っていったのだ。






ほんとうは、こんな経験したかった。

普通の女子高校生になって、恋をして、付き合う。

それが、あたしの夢になった。

あたしの人生の全てが決まったあの日………あたしの夢はすっと落ちていった。

そう、ただの夢。叶いはしない、あたしだけの夢。

……そうだった。雛のおかげで、あたしは今夢をみることができている。

あたしの靴箱を探して、それと一緒に好きな人を探す。

それを、ずっと雛から聞いていた。恋とは楽しく、悲しいものだと。

あたしには許されない。誰かを好きになるなんて、許されないのだ。

「おせーよ」

笑って”あたし”を呼んでくれる彼ら。いまだけは、夢をみていたい。

久しぶりに聞くチャイムの音。それから、授業が始まる。

あたしの隣は紫土と瀬吏。ポーカーフェイス組だから、話しにくいんだけど。

瀬吏のことは全然わからない。

柔らかいと思っていても、怖い雰囲気をださないことはない。