「雛、数学の宿題、した?」

カワイイ系の彼が顔の周りにお花を散らせながらあたしにいう。いや、雛に言う。

多分この子は……今あたしが雛凛であるからこんなにやさしいのだろう。

そう聞いて、やばいと思ったあたしは急いでカバンを開けてチェック。

「やって、ない………」

ノートをみると、しんどかったのかやった形跡もなかった。

「え、やばくない?今日の数学、雛凛あたるじゃん?」

玻取があたしに『当たり前でしょ?』みたいな顔でいう。

今のあたしには、全然普通じゃないんだけど。

あたしはノートの内容から見て、頭の中で数式をつくる。

「まあ、この問題難し……」

「できたよ。」

あたしはノートにサラサラと答えをかいた。

まあ、応用ぐらいなら簡単だ。

「やっぱ、雛凛ってすごいんだな。」

玻取が感嘆の声を漏らす。ここまでであたしに喋ってくれたのは、陽楓と玻取だけ

そういえば、あたし………雛の友達の名前聞いてなかったんだけど。

「ね、ねぇ。私っていつも誰といたっけ?」

”あたし”を言いそうになるが、”私”に切り替える。

こんなことをいえば、怪しまれるかもだけど、いまはこうするしかない。

「雛凛?どうした?」

銀の狐狼、紫土が口を開いた。

……どうして、この人たちはたった1日だけで雛凛と仲良くなっているのか。

違和感を覚える。もしかして、雛凛は前からこの人たちと認識があってのではないか。じゃなと、今のように完全に警戒心のないことは生まれない。

襲われて安否確認をしにくるのは面識があったならしても問題ない。

考え込むあたしを、瀬吏がのぞき込む。

「大丈夫か?」

どういうこと?ケンカ以外では敬語の彼が、二重人格の彼が今敬語を使わなかった

どういうことだろう。”こちらも”そういう偽装をしているのか。

「だ、大丈夫よ。」

一応雛風に答えてみたけど………疑問は消えない。