…吞気なこと思ってないで、早く自己紹介しなきゃ!
まぁ、向こうは私の名前知ってるみたいだけど…。
既に、拓海さんが変な紹介してそう…。
「柴田菜帆です。…高校1年生です。拓海さんには、お世話になってます」
「え、逆じゃない?家事出来るくせに、壊滅的なほどの料理オンチだから」
…そこは、否定できない…。
前に一度、拓海さんに料理をやってもらったけど…得体の知れない何かが出来上がった。怖かった。
「菜帆ちゃん、私は『瞳』でいいからね?」
「瞳さん…!」
「うっ、若い子オーラが眩しい…!」
「何言ってんの」
動きが一々可愛い。
何をやっても様になる。美形だから。
「ま、いいや。早く奥に入りなよ。母さんと父さん待ってるし。向こうの方が、暖房利いててあったかいし」
忘れてた……!
まだ、お姉さんとの対面だけで安心してはいけないということを…。
っていうか、向こうの方が暖房利いてるってどういうこと?
ここでも充分すぎるほどあったかいんですけど…。
「…もしかして、母さん張り切りすぎて、作りすぎてる?」
「正解。料理の山になってる」
そんな会話を聞くと、なるほど、確かに。
美味しそうな匂いが漂ってきている。
相当な料理上手なんだろうなぁ…。
匂いだけでお腹空いてきた。
…おかげで、緊張が少し、和らいでいた。