「世の中の恋人たちは、クリスマスはこんな風に、イルミネーションデートするらしいよ?」
「…そうなんですか」
「で、その、デートしてる女の子って、大概、目がキラキラしてて嬉しそうなんだよね。だから、俺にも本当に好きな人が出来たら、してみたかったんだよね、イルミネーションデート」
「…なんか、可愛い」
こんなこと思うのはなんだと思うけど、結構ロマンチストだよね、拓海さん。可愛い女の子みたいなこと考えてる。…こういうとこ、私より彼女っぽい。
「…そんな嬉しそうな顔しちゃって。そっちの方が可愛いーですよ」
「…!」
地獄耳…。
何気なくポツリと呟いた言葉なのに、何倍かにして返された。
やっぱり拓海さんは手強い。それに、ズルい人だ。
「ふふ、顔、真っ赤」
「さ、寒いからです…!」
「そう?俺はそこまでじゃないけど…。…手、繋いだらあったかいし」
そう言って、拓海さんは、繋いだ手に目を落とした。
私もつられて、そこに目を落とす。
『あったかい』っていうのは、心のことなのか、身体のことなのか。
どっちを指してるのか、私にはわからないけど、どっちだって嬉しいから、どっちでもいい。
「…帰る?寒くなってきたなら」
寒いと言われれば寒いけど、なにも、特別寒いわけではなくて、誤魔化すために言っただけだった。だから正直、いつもの私なら「どっちでも構いません」と答えるだろうけど。
「…もう少し、観てたいです」
「わかったよ」
鼻を赤くしながら答えた拓海さんを見て、私はさらに、幸せな気持ちになった。