二人のことを考えていたらテンションが上がってきたので、勢い余って拓海さんにも二人の話をしてしまった。
…んだけど…。
「…」
「拓海さん、どうしたんですか?そんなにムスッとして」
「それ、菜帆も絶対モテてるじゃん…」
何度言ったらわかってもらえるのだろうか。
私がモテてるわけではない。
由奈ちゃんと紘子ちゃんがモテるのに。
「私はモテてないです!たまに、男の子と話すことあっても、二人ばっかり話しかけられて一人でボーッとしてる私を可哀想に思って、気を遣って話しかけてくれる人はいますけど!」
「いや、それ、菜帆がモテてるんだよ」
「ち・が・い・ま・す!」
…そうは言ってみたものの、拓海さんは相変わらずの不満顔。
…このまま水掛け論をしてたら、絶対遅刻する。
そろそろ終わりにしよう。このままじゃ埒が明かない。
「そういう拓海さんこそ、仕事場で、お客さんなんかにモテモテなんじゃないですか?」
「…まぁ、確かに。俺目当てのお客さんはいっぱいいるよね」
「…そう、ですか…」
自分で、少しイタズラしてみようかと思ったのに、平然と答える拓海さんに、何だか胸が痛くなった。
…拓海さんはかっこいいだもん、当たり前のはずなのに。
直接聞かされると、こんなにも、重い。
「何、菜帆。それってヤキモチ?」
「…そうかもです」
こんなのに一々嫉妬してちゃいけないって、わかってるけど。
拓海さんは、私のこと大切にしてくれてるって、ものすごく伝わってくるけど。
…だけど、どうしても、気分が重い。
いつもなら楽しいはずの朝なのに。
一日のはじまりに、拓海さんといられて、嬉しいはずなのに。
…なんであんなこと聞いちゃったんだろう。
と、早くも後悔が押し寄せる。