限界がきた私は、力が抜けて立っていられなくなり、その場にへにゃりと倒れ込む……のを、拓海さんが阻止した。
「ごめん、やりすぎた？」
はい、やりすぎです。
力抜けたし、史上最高に顔真っ赤だろうし。
…なんて言ってしまおうかと思ったけど、拓海さんがあまりにも幸せそうだったので、コクリと頷くだけにした。
「ふふ、ごめんごめん」
「…絶対に思ってないですよね」
「菜帆が俺の本心見抜いてくれるなんて……」
…『本心見抜く』どころか、少しは取り繕うとかしないんですか。
噓つかれるのは嫌だけど。
「ね、菜帆。もう一回キスしていい？」
「だ、ダメです…」
ガーン！
…という効果音がつきそうなほど、落ち込んだ顔をする拓海さん…。
「…なんで？嫌いになった？嫌いなの？」
「違います！…その…恥ずかしくて…」
「なんだ、そんなこと。じゃあ、いっぱいキスして慣れよっか」
「そういう問題じゃないです…」
なんだろう、会話の次元が違う気がしてきた。
「うぅ…ギュッってするのじゃダメですか？」
私は拓海さんを見上げて聞いた。
「なに、菜帆。誘ってるの？」
「どこをどう解釈したらそうなるんですか！」
「考えてごらん、菜帆。潤んだ目で上目遣い、この体勢、そしてそのセリフ。なに、ほんと。俺の理性崩壊させたいの？」
？？？
本当に、何の話？
「無自覚は余計にタチ悪いな…」
「え…その…ごめんなさい…？」
「わかってないでしょ」
「すみません……」
