このままでいると、おかしくなりそうだ。
だけど、このままでいたいと思う私は変なのだろうか。
「…拓海さん、拓海さんは今、ドキドキしてますか…?」
「…してるよ。ほら」
そう言って拓海さんは私の手を取り、自分の胸に当てる。
…本当だ。
すごく、ドキドキしてる。それに、鼓動が速い。
拓海さんは余裕があるんだとばかり思ってたけど、私と同じみたいで何だか嬉しい。
――それに。
洋服の上からでも感じられる、程よく筋肉がついた男の人特有の厚い胸板が、さらに私をドキドキさせる。
…って、私、なんだか変態っぽい…?
「…そんなこと聞いてくる菜帆は、ドキドキしてるの?」
拓海さんが、意地悪そうな顔をして聞いてくる。
「…ドキドキは…してません…」
「噓はよくないよ、菜帆」
「…噓じゃないです…。…ドキドキなんかじゃ足りないくらいドキドキしてて、心臓壊れそうです…」
さっきまでのあの笑みはどこへ行ったのか、拓海さんは俯いてしまった。
どうしよう、言わない方がよかったかな…。
「……何なのこの可愛すぎる生き物」
…え?
今、なんて?
「あの、拓海さん…?」
「菜帆は俺にドキドキしてるんだね、一応。正確に言うと、それよりももっとすごいんだよね。どうしよう、俺、嬉しすぎて死ぬかも。夢なら覚めなくていいや本当」
「いや、夢…ではないですけど…」
拓海さんが壊れた…。
「本当?じゃあ菜帆、試しに俺の頬っぺたつねってみて」
「いや、できません…」