「じゃあ、帰ろっか」
「いや、待ってください……!」
「なに、嫌なの?」
「当たり前です!」
…そんなシュンとしても、私はもう騙されませんからね。
「なんで?やっぱり俺より、イケメン店長がいいんだ?菜帆は」
「そうじゃなくて…!お金貰うからには、ちゃんと働きたいんです!」
「じゃあ、お給料引いとく?」
店長がケロッとした顔でそう言う。
いや、そもそもさっきと言ってること違うじゃないですか。
「いや、お金は必要なんで」
とりあえず、そう答えておく。
…実際必要だし。
「菜帆は真面目だねぇ」
「普通です。当たり前です」
常識です、そんなこと。
…私の中の常識と、他の人の常識は違うんだろうけど。
いや、でもやっぱり…。
「なら、やっぱり待ってようかな」
「いや、そんな…」
「うん。てゆーか待ちたい。待つ。決定」
そんな勝手な…。
店長、どうか許可なんか出さないでください!
「うん、いいんじゃない?」
…ですよね…。
店長のことだもん。
わかってたけど…。
「…でも、今日はもう店閉めようかなって思っててさ。弟の誕生日だから」
「……そうだったんですか…」
あぁ、なんてこった。