「菅谷さん、自転車貸してもらえますか?」

「お、八代くんじゃないか。何?隣の子は?彼女?」



管理人さんは、菅谷さんというハキハキとした女性だった。

…なんか、居酒屋で飲んでそう…。



「彼女じゃないけど、好きな子です。昨日、拾いました」

「拾ったって…猫じゃあるまいし…。まぁいいや。名前、なんて言うの?」



菅谷さんに聞かれたので、私は軽く自己紹介する。



「柴田菜帆です。拓海さんの部屋に、昨日から居候させてもらってます…」

「え!?八代くん、もう連れ込んだの!?」

「…言っておきますけど、手は出してませんよ」



私の自己紹介…というよりも、さっきから拓海さんへのツッコミの方が激しいような…。まぁいっか。



「菜帆ちゃん?だっけ。私は菅谷多恵子。ここの管理人やってるんだ。年は聞かないでね」

「ふふっ。はい。よろしくお願いします」

「菅谷さん、自転車…」



拓海さんが声をかける。


あ、また忘れそうだった…。



「あぁ、はいはい。菜帆ちゃんが乗るの?」

「そうです」

「じゃあ、菜帆ちゃん。着いておいで」

「はい」



…菅谷さん、頼もしい…。

私の前を歩くその背中が格好いいです…。


菅谷さんに案内されたのは、自転車置き場。

たくさんの自転車が並んでいる。



「菅谷さん、こんなにたくさんの自転車、どうしたんですか…?」

「趣味だよ、趣味。壊れた自転車とかとかバイク、まぁ、壊れてないヤツもだけど、直したりイジッたりするのが好きでさ。壊れた自転車とかもらって直しまくってたら、いつの間にかこんなに増えちゃった」

「…すごすぎる」



私の口からは、素直にそんな言葉が出ていた。本当にすごい。