リビングにあるテーブルの上に、それぞれの食べるものを置くと、私たちは向かい合って座った。…何だか気恥ずかしい。
視線が交わることを避けるかのように、私はテーブルの上のカップラーメンに目を向けた。
そこから少しだけチラッと見ると、拓海さんがいそいそとコンビニおにぎりの個包装を取っている最中だった。
あ、取り終わったっぽい。
「じゃあ、いただきます」
「…いただきます」
拓海さんが手を合わせて言ったのを真似するかのように、私も手を合わせて言った。
お箸を手に取り、おそらくもう伸び始めたラーメンをすする。
「…おいしい……」
「よかったね」
気付けば、自然に声が零れていた。
…いつも、何も思わないで一人で黙々と食べていた気がする。
だから、誰かと食べることの嬉しさなんて忘れていた。
こんなにも違うものなんだ。
思わず、「おいしい」と零してしまうほど。
「拓海さんは、おいしいですか…?」
「うん、おいしいよ。おにぎり好きだからっていうのもあるかもしれないけど、誰か…ううん、菜帆と食べてるから、余計おいしい気がする」
誰か、じゃなくて『私』……。
何だか、胸の奥がむずがゆいような、くすぐったいような。
だけど、すごく嬉しい。
私も、『誰か』じゃなくて、拓海さんとだからおいしく感じるのかもしれない。
…そうだといいな。
その方がいいな。
特別な存在ができたみたいで、嬉しくなるから。
…と言っても、同居してる時点で特別な存在なのには変わりないか。
でも、同居人になんて正直なところ誰にでもなれるし、やっぱり、精神的な『特別な存在』っていうのはできたら嬉しいな。
それが、拓海さんだったらいいな。