私がそう言うと、なぜか拓海さんもスタッフさんも苦笑い。



「…菜帆、それを着てる菜帆が可愛いし綺麗なんだよ?もちろん、ドレスも可愛いし綺麗だけど、それは菜帆が着てるから余計に可愛くなってるんじゃないかな」

「…っ」

「おぉ…旦那さん、すごいですね~」



恥ずかしくなってる私をよそに、吞気な声をだすスタッフさん。

…もうちょい自重してください…。



「あーあ、ヤダなぁ。可愛すぎてみんなに見せたくない。菜帆、このまま出るの?式」

「そうじゃなきゃ何のために着替えたんですか、私…」

「俺の元気をチャージするため。俺の欲望を満たすため。菜帆欲」

「なんですかそれ…」

「あ、あの…お二人とも?じゃあ私は、そろそろ退出しますね?式の時間には遅れないように気をつけてください」



遠慮がちに言うスタッフさんの声で、私は我に返った。

そしてそのまま静かに部屋を去ったスタッフさんの背中に思いを馳せながら、暴走している拓海さんを何とか落ち着かせようと奮闘中。



「菜帆、このまま逃げちゃおっか」



いたずらっ子みたいな笑顔でそんなことを言う拓海さんは、もちろん冗談で言ってるんだろうけど、どこか不安になったから、ちゃんと言っておかなきゃ。



「ダメです」

「花嫁を連れ去る」

「ダメです」



釘を刺してもなお、また言い出した拓海さんに、すかさず二本目の釘を刺す。



「菜帆、」

「今度はなんですか…」



若干呆れ気味で振り返ると、



――チュ



甘いキスが降ってきた。



「これからよろしくね?俺の花嫁さん」

「…こちらこそ、よろしくお願いします。…旦那さん」



私は、心の中で一足早く、拓海さんに永遠の愛を誓った…。




fin.