マリーゴールドが咲く前に




「 答えは急がなくていいから
川瀬くんと終わらせた後でも 、
関係に一区切りついた後でも
いつでもいいから 」



中村くんは立ち上がってわたしの頭をぽんぽんした 。



さらにわたしの顔が赤くなった 。



「 う … っ … うん 」



目が合ったまま 。 逸らすのもなんかなあ …






「 … っ じゃあ ! わたし日誌出してくるね ! 」



赤くなったわたしの顔をこれ以上見られたくないし 、 このなんとも言えない空気に耐えられず教室を飛び出す 。




さっき中村くんと話したことをひと言 、 ひと言思い出して … 。



中村くんがわたしのこと好きとか … っ !







中村くんの体温とか笑顔も思い出してしまって全然熱が冷めない 。




川瀬くんの体温しか知らなかった 。




終わらせないと 、 川瀬くんと 。




もう誰にも迷惑かけられない 。



前に進まないと 。






「 蜜のことが好きなら やめてくれ って
もっと言えばよかったのに 」



中村 1人だけの教室に踏み入れる 。



「 川瀬くん 」



くん付けなんかしちゃって 。


どこまで優等生ぶるんだか 。


まあ俺もくん付けするけど 。



「 どこまで聞いてたの ? 」


「 中村くんが俺と蜜のこと知ってる
ってところからかな 」






「 そっか 」



スポーツマンらしい笑顔 。




「 否定されるとその人のこと
嫌いになっちゃうからあんまり強く言えないよ 」


「 好きな人には嫌われたくないし 」 って言葉も付け足して 。



「 中村くんにだけは蜜を渡したくないな 」



シニカルな笑顔を見せてちょっとだけ煽ってみる 。






俺だけが知っている蜜のことだってある 。



蜜が最近聴いている曲だって 、

ずっと好きなキャラクターだって …




「 じゃあなんで彼女と別れないんだよ 」



中村の目つき …


蜜にだって見せてないだろ …



知ってるよ 。



自分の好きな人が浮気相手になってる状況 、

俺を怒らないわけない 。






「 彼女と別れるとか 、
江坂さんとの関係をどうにかするとか
江坂さんを苦しめない方法もっとあるだろ 」



本当は彼女と別れたい 。



迷わず蜜を選びたい 。



けど彼女と会うと別れ話もできない 。



情けない 、 ただの言い訳 。



「 江坂さんが悲しい顔を見たくない
それは川瀬くんも同じだと思ってたけど 」








自分でも最低だと思う 。





未だに彼女と別れられないのに 、



蜜が誰かのものになるのは嫌なんだよ 。





蜜の気持ちを知りながら


曖昧な関係でいる自分が 。







「 俺も同じだよ
蜜を本当の意味で幸せにしたい 」




「 江坂さんが幸せならそれでいいとか
そんな綺麗事言わないよ 」




「 本当は嘘なんでしょ ? 」




教室から出ようとする中村を止める 。



「 部活が落ち着いたからとか 、
蜜の委員会の仕事を手伝いたいからとか 」