「 冬になったら毎日使ってよ 」
「 毎日手を繋いで匂いチェックするからね 」
ニコッと笑った川瀬くんに言われた 。
使わないわけないよ 。
これでいつも川瀬くんを思い出すし 、
川瀬くんがこのハンドクリームの匂いをいつになっても忘れられないように 。
わざと教科書を忘れて
「 教科書忘れちゃったから見せてくれないかな 」
ってただのクラスメイトのフリする声も 、
机をこっちに近付ける姿も 、
授業中 わたしが左利きで右手が空いてるからって
川瀬くんの左手の小指とわたしの右手の小指を結んで嬉しそうに笑うのも 、
全部愛おしい 。
文化祭当日がもうすぐ来る 。
完璧王子な上にみんなからの信頼も厚いから頼られてばっかりの川瀬くん 。
そんな川瀬くんと一緒にいられるだけでも幸せだと思わなきゃ 。
自分が馬鹿すぎて笑ってしまう 。
本当は彼女になりたいのに都合のいい女を演じてる 。
わたしを愛してくれないのにいつまでも嫌いになれなくて 、 同じことを繰り返してる 。
文化祭当日 。
みんな浮かれてる 。
もちろん他校の人や大人や子供も来てる 。
わたし達のクラスの出し物はプラネタリウムカフェ 。
大きい教室を借りることができたから 、
教室の中にプラネタリウムのドームを作って 。
空いた場所はカフェにして 。
プラネタリウムだから教室の中は暗い 。
暗幕を使ってるから外の光はほとんど入らない 。
でもプラネタリウムに影響が出ないように 、
カフェには青と白の小さなランプで薄暗く 。
だいぶロマンチックな雰囲気になっているからカップルのお客さんも多い 。
川瀬くんとわたしは仕事の時間が少し被ったから暗い教室の中 、 こっそり手を繋ぐ 。
暗闇の中ではどのカップルもやってると思う 。
わたし達はカップルじゃ無いけど 。
川瀬くんは仕事の時間が終わった 。
わたしの手から離れていく 。
これから彼女さんも来るのかな 。
そりゃそうだよね 。 重大なイベントだもん 。
心の準備をしながら仕事の時間が同じのアカリと中村くんと話す 。
2人ともこの出し物には満足してるみたい 。
そしてありがたいことにお客さんも多いから余計なことを考えずに済む 。
忙しい中ようやくわたしの仕事が終わりそうな時 、
1番来て欲しくなかった2人のカップルが来た 。
やっぱり 、 って思っていたけど初めて見る彼女さん 。
しっかりした性格っぽいけどふわふわしたボブで可愛い女の子だった 。
隣には川瀬くん 。
本当にお似合いだった 。
わたしよりも身長差は無くて 、
でもいい感じの身長差で 。
ってなに比べてんの …
彼女さんはこの教室の中を見渡して驚いてる 。
それを川瀬くんが笑ってる 。
わたしだけに見せる笑顔じゃなかった 。
当たり前か 、