「・・・さむっ!!!」

気分転換なのにすでに外に出た事を後悔し始めている自分・・・何とも情けない。

「まさかこんなに寒いとはなぁ〜。でも頭はすっきりするかな」


慣れ親しんだ道を歩いていくと小さい公園が見えてきた。ちょうど小さい女の子と男の子が楽しそうに砂遊びをしているところだった。その姿を楽しそうに見守っている母親達はお互い話に花を咲かせていた。
私は公園入り口近くにある古びたベンチに腰を掛けて何をするでもなくぼーっとその様子を見ていた。

「なっちゃんここに穴開けると、トンネルの完成だよ!」

「うん!じゅんくんはそっちから穴開けるんだよ」

嬉しそうに2人して砂の山に穴を掘っていた。

『いいわねぇ〜。若いって・・・青春ね。この2人幼なじみかしら。』

今だにトンネルは開通しないのか、一生懸命に穴を開けていた。
『幼なじみか・・・。恋愛ものの王道ね‥。大きくなっていくうちにお互いの存在がどんどん大きくなっていくのよね。』

気付かないうちに頭の中には2人の王道への道がどんどんと出来上がっていく。

『いや・・・でもここにじゅんくんにライバルが・・・あぁ!!いいわ!なっちゃんを取り合う男2人・・・!!傷付きながらも自分の気持ちに気付き始めるなっちゃん・・・あはは。最高よ…!!!!』

自分の頭の中での妄想に私は夢中に成りすぎていた。

「ねぇ。ママ〜あのお姉ちゃんずっと笑ってるよ?」

「見ちゃいけません。行くわよ」

焦って手を引かれつつ足早に帰る親子連れにすっかり変人扱いされていた事に気付いていなかった。