「相原先生、私いい事思い付いたんですけど。」
「なんですか?急に」

嬉しそうに、にこやかな笑みを向けてくるのは私の担当編集者 長野夏美(ナガノナツミ)だ。
「何って。決まってるじゃないですか!次の話のモデルですよ。」

「次のモデルって・・。」
「はい。次の話は男同士の話なんてどうですか?相原先生!」

「・・・・・・・・・・・・はい???」
私の名前は相原直(アイハラナオ)25歳
職業は小説家。と言っても短編の話を何とか雑誌に掲載して貰っている・・・まぁはっきり言えば売れない小説家です。

私の場合少しやっかいで何しろモデルがいないと話が書けないという何とも情けない理由がある訳で。

しかも恋愛ものしか書けない。という小説家としてどうなのよ。それってという微妙なところなんです。

なぜ恋愛ものばかりかというと理由は簡単・・・・・・私が恋愛というものをした事がないから。
今まで男性とイイところまでいくのに何故か恋愛にまで発展しないこといくつあった事か・・・。

だから私は小説という自由に表現できる場所で主人公を自分に置き換えていろいろ今までやってみたかった事を書いて、もっと多くの人に読んで貰いたいと少し調子に乗って出版社に送ったところ見事に新人賞を受賞してしまい、気付けばあれよと言う間にデビューが決まり、今に至るといったところです。

「相原先生聞いてますか?」
「えっ?!あっ・・・うん。聞いてるよ」
「それにしては反応がイマイチでしたよ」
「イマイチって・・。どう反応していいのか、困ってるんだよ」
「どうしてですか?もっと喜んで下さいよ!」
「喜べないでしょうが!!」「何でですか〜??」
私が何故喜べないのか、まるで分からないといった顔で聞いてきた長野さんに「何でって決まってるでしょ!!!私が書いているのは、男の子と女の子の恋愛話で男の子同士なんて書ける訳ないでしょうが!!」と顔を真っ赤にして怒鳴る私に、びっくりして目が丸くなり口を少し開けたまま呆然としていた。