ところが姫が、怪訝そうに隣の女を見る。
「あの、こちらの方は…?」
姫の問いに、俺は、
「全然知らない人。」
と答えて、隣の肉食女子に
「連れが来たので、失礼。」
と、一瞥をくれて、姫の手を取って立ち去った。
姫は戸惑いながらも手を引かれてついて来る。
しばらく歩いたところで、姫が口を開いた。
「あの、課長?」
そこで俺は、慌てて姫の手を離した。
「ごめん、つい。」
俺が謝ると、
「いえ、それは別に…
けど、なんやったんです?」
と不思議そうに俺を見上げる。
「逆ナン。しつこくて困ってたんだ。」
「へぇ〜。
でも、綺麗な人でしたね。」
姫はそう言いながら、歩き始めた。
「そうか? 俺は姫の方が美人だと思うけど。」
俺は素直に思った事を口にして、姫の隣に並んで歩く。
いや、並んで歩いたはずだった。
だけど、気付けば、姫は隣にいなくて…
慌てて振り返ると、姫は真っ赤な顔をして立ち止まってた。