怪しげな月がひっそりと顔を覗かせて来て、街はオレンジ色に包まれる。

あちこちに置かれたかぼちゃの笑った口から零れる蝋燭の明かりに、街灯から垂れ下がった呪(まじな)いが描かれた垂れ幕。

街全体が盛大に賑わっているのは、お祭りというなの魔除けのため。

この時期は町から離れた魔の森から、悪魔や怪物がやって来て町を襲うことがあり、それを防ぐためにこうやって魔除けをしている……のが本来の目的だったらしい。

それが今ではこうやってお祭り騒ぎになっていて、仮装した子供達にお菓子を配ってはお菓子をあげないとイタズラされるとかいうなんとも不思議な行事に早変わり。

本来の目的は一体どこへ行ったのやら。

今でも人里離れた場所には悪魔や悪霊達がさ迷っている、という噂話は聞いたことはあるけどーー


「子供騙しには丁度いいものよね」


そう言って籠の中に今朝から作ったクッキーの袋を綺麗に並べる。

子供達は今年も楽しそうにお菓子を求めにやって来る。