少し離れた街から待ち望んだ10回の鐘の音と、31発の花火が打ち上がる音。
花火の輝く光が窓に反射しては、次々と色を変えていく。
森の奥にひっそりと佇む一件のこの大きな屋敷にも、その時期を知らせる音が響く。
ーー心躍る時期が今年もやって来た。
そろそろ皆を起こす時間だと、蝋燭に向かって指を鳴らすと怪しげな火が灯る。
その蝋燭が灯ると、部屋の蝋燭達に火を移しながら火の玉が動いていく。
ゆっくりとソファから立ち上がり、軋み悲鳴を上げる扉を開けて埃を被った絨毯の敷かれた廊下を歩く。
火の玉はホールのシャンデリアに明かりを灯すと、ゆらゆらとその身を揺らした。