「……っ」



自分がそんな顔をしているなんて、わからなくて。
顔が真っ赤になっていくのがわかる。



「俺の理性保たせてくれ」


「いや、暁があんなことするから」


「しょーがねーだろ。飴食ってるお前みたら、ムラムラきちまったんだから」


「どんだけ……」



言いかけた言葉は途中でやめた。
たぶん、あたしも一緒だから。

はやく、暁とひとつになりたい。
その想い、暁とおなじだから。



「あ、心海」


「ん?」



ドアノブに手をかけたあたしの名前を呼ぶ。



「トリックオアトリート」


「ふふ、ハッピーハロウィン」



今日は10月31日。
ハロウィンだ。



「今日、帰ったら子作りでもしよーぜ」


「……な!?ハロウィンと関係ないし!」


「ハロウィンベイビーいいじゃん」


そんなことを言ってケラケラ笑っている暁。



「子供ができたら、ちゃんと公表しようね」


「あぁ……」



いつまでもごまかしなんてきかない。
タイミングは、あたしに任せると言っていた暁。

子供ができたら、ここを辞めることになってるから。
その時がタイミングだなと思っている。

その時まで、みんなの中の奥さんはあたしじゃないかもしらない。
でも、あたしと暁のなかではちゃんとあたしたちが夫婦だから。

だから、いまは十分。

ハロウィンの奇跡が起こるかもしれない。
そんな日に。

ハッピーハロウィン!!!