「紗奈ちゃんだよね?」
「え?」
授業が終わって、帰ろうと、靴を履き替えてるときに、声をかけられた。
見ると、学年1のモテ男子こと、葉山瞬くんがわたしを見下ろしていた。
「はい、そうですけど……」
こんなイケメンが、わたしに何の用!?
クラスも違うから、喋ったこともないし、接点なんて見つからない。
そんな彼が、わたしにどうしたんだろう?
「俺のこと知ってる?」
「うん、葉山瞬くんだよね?」
「知ってくれてんの?嬉しい。」
いや、誰でも知ってると思うけどね?
そんな嬉しがる?
「どうしたの?わたしなんかに。」
「あのさ……」
うん?
「俺……」
「紗奈ちゃんのことが、好きだ。」
「…………え!」
今、なんて……?
「入学式のときに、一目惚れしたんだ。」
入学式って、半年も前だよ?
嘘……
「紗奈ちゃん、俺と付き合って。」
「えぇ!?つ、つ付き合って!??」
「ああ。好きだ、紗奈ちゃん。」
えぇ!?
「頭がついていかないんだけど……」
「ごめん、突然だったよな。」
「ううん。」
なんで……わたしなんか………
あ、もしかしてゲームとか?
葉山くんがゲームに負けて、わたしに『告れ』みたいになったとか……!
めっちゃあり得るんだけど……!
そんなのでわたしに告るなんて……
あり得ない!
最低っ!
「葉山くん。申し訳ないけど、わたし彼氏いるから。」
「え、そっか。そうだよな……」
ほんとは、彼氏なんていないけど。
でも、一瞬、葉山くんが悲しそうな顔をして見えた。
……気がした。
でも、絶対、こんなことあり得ないから、演技なんだ。
わたし、そんな人とは、付き合わないもん!
「そいつって誰?」
それ、聞く!?
んー、なんて答えよう。
真剣な目で見てくる葉山くん。
うぅ……
そんなに見ないでほしいんだけど……
この質問には答えずに、この場から逃げようか?
それとも、誰か違う人の名前でも、言っておこうか?