こうして予定通り、ビンゴ大会が始まった。ビンゴ用紙が各テーブルに配られ、桃子ちゃんが簡単な電動式のビンゴマシーンを用意すると、スイッチを押した。出てきた番号を佐々木さんがどんどん読み上げていく。

 その度に各テーブルからは、「よしっ」「あー」などの声が漏れ、再び場の空気が盛り上がっていった。

 私は全然バラバラで、ビンゴになる気配が無い。そうして暫く何度か番号が読み上げられているうちに、
「ビンゴです」
 という声がついに上がった。

「ええー!」「もう?」と言う声とともに、ビンゴになった声の主に、皆の注目が集まる。

「おおっ、倉持さん!」

 なんと、ビンゴで一番になったのは、環だった。環は困ったように眼鏡のブリッジを押して、苦笑いを浮かべた。

「すみません」
「なんで謝るんですか! 歓迎会で主役が一番なんて最高ですよ!」
 桃子ちゃんがテンション高めにフォローを入れる。桃子ちゃんは後ろに用意された予備のテーブルから、薄い紙の包みを持ってきて、

「一等賞はペアの温泉旅行です!」
 と紙を皆に見せた。

 環は嬉しそう、というよりは明らかに動揺した面持ちでその紙を見つめている。

「ずばり、誰と行きたいですか?」
 桃子ちゃんの質問に、
「例の幼なじみだろー!」
 とまた茶々が入る。

 答えを求められた環は、さり気なく私の方を見て、
「……迷惑でなければ、誘ってみようと思います」
 と言った。その言葉にまた場が盛り上がる。

「良いぞ良いぞー! それでこそ男だ!」

 私の脳裏に一瞬、環と温泉旅行に出かける光景が思い浮かんだ。でもすぐに恥ずかしさがこみ上げて、目の前にあるお酒に手を出し、半分ほど一気に飲んだ。

 環が一等賞を当てたのを皮切りに、その後は雪崩のように沢山ビンゴになる人が現れ始めた。

 家電系の景品から、米沢牛の引換券、商品券、お菓子などどんどん良い景品がなくなっていく。

 結局私が当たったのは最後の方だったけれど、それは可愛い猫の写真集で、猫が好きな私はそれでも満足だった。