ぐるぐると考えているうちに、桃子ちゃんが何かを言っていて、質問の内容は他のテーブルに移っていて、環は仕事や趣味の話など色んな質問に答えさせられていた。

 そわそわする気持ちを落ち着かせるために、下を向いたままさっきグラスに継ぎ足されたビールをまた一気に飲み干す。

 すると、グラスに瓶の口が当てられるのを見て、ハッとして顔を上げた。部長だった。

「さっきの質問はなかなかきわどかったね。緊張しただろう」
 環と皆のやり取りを邪魔しないように、部長が小さな声でねぎらってくれた。

「い、いえ。大丈夫です。ありがとうございます」 
 ビールを注いでもらうと、私も空になっていた部長のグラスにビールを注ぎ、私はまた一気に飲み干した。さすがに部長も驚いて目を丸くする。

「今日は随分良い飲みっぷりだ」
「な、何だか最近お酒を飲んでいなかったから、つい飲みたくなって」
 急に沢山のアルコールを入れたから、頭の中がクラクラしてきた。

「まだまだ会は始まったばかりだから、ほどほどにね」
 私はこくりと頷き、目の前のサラダを少しだけ食べた。

 その間もイベントの内容は全く入ってこなかった。ひたすらお酒を飲み、サラダをつまむ。

 そんな動作をずっと繰り返していると、不意に誰かに肩を叩かれた。びっくりして肩が跳ねる。顔を上げると、今度は桃子ちゃんだった。

「先輩、大丈夫ですか? 顔真っ赤ですよ」
「……へ、そう?」

 辺りを見回すと、さっきまでテーブルに着いていたはずの社員たちは皿を持って立って歩き回ったり、席を入れ替わったり、併設されたバーカウンターでお酒を飲んでいた。

「あ、あれ? どうなってるの?」
「質問のイベントが終わったので、今はちょっとした自由時間です。ずっと同じ席に座ってると、なかなか皆さん同士で交流できませんから」
「え、もう終わったの?」

 そんなに時間が経っているとは驚きだった。慌てて環の姿を探すと、環は別のテーブルで何人かのベテラン社員さんや営業事務の子達に囲まれて話をしている。

「倉持さん、イベントが盛り上がり過ぎて、終わってもまだ質問攻めですよ」

 桃子ちゃんがくすっと笑い、私に水の入ったグラスを差し出してくれた。ありがたく受け取り、中の水を飲む。