城崎部長と環を交えた仕事内容の打ち合わせが終わると、私はデスクに戻って大きくため息をついた。
「はあー……」
私のことを覚えて居てくれた環と、再会して一緒に仕事が出来ることは嬉しい……はずだった。数十分前までは。
でも、打ち合わせが進むにつれ、環の営業事務としての仕事の大変さに、血の気が引いていくのを感じた。普通の営業事務であれば、見積書や納品書の作成、製品の一次問い合わせやクレーム対応、取引先からの電話の取り次ぎ、メール対応、顧客管理などが主な仕事だ。
でも、環は最初から子会社から大きな取引先を数社引き継いで来ていたので、その分、事務の仕事が煩雑になる。
それに加えて、新しい海外ソフトウェア製品の発掘も任されているので、環は海外出張や、販売先との折衝、住忠商事の子会社とのやりとりなどもあるらしい。新規開拓で新しい取引先が増えることも考えると、やらなければならない事務の仕事が多すぎて気が遠くなりそうだった。こうなると営業事務、というよりも専属秘書、という言い方の方が正しそうだ。
それに、打ち合わせが終わると環は部長に連れられて早速外出してしまったので、話す機会もお預けになってしまった。
「先輩、まだ午前中なのに仕事終わりみたいな顔してますよ」
隣のデスクから桃子ちゃんが私の顔を覗き込んで、心配そうに眉を下げた。
「いや、ちょっとね」
「もしかして、倉持さんの仕事ですか?」
「えっ、なんで分かるの?」
「やだなー、先輩。こう見えて、結構めざといんですよ私」
……桃子ちゃん、それは重々知ってます。