「名前じゃないって?」

「……… 」

瀬崎さんの様子がいつもと違う。

「分かった。嘉人くんに聞くからいいよ。」

私が言うと、「はぁ… 」と瀬崎さんはため息を吐く。

「てんちゃん。」

「えっ?」

「もともと、店長って呼んでたんだ。
それが、店長じゃなくなったから、
『てんちゃん』になった。
だから、夕凪は普通に名前で呼んで。」

ふふっ
かわいい。
だから、恥ずかしくて言いたくなかったのかな。

私は、なんて呼ぼうかなぁ。

「んー、幸人さん、ユキさん、ユキちゃん…
やっぱり、ちゃん付けはやめよ。
ユキ、ユキくんは言いにくいなぁ。
ゆっくん。
うん、ゆっくんがいい。
ゆっくんでいい?」

私が聞くと、瀬崎さんは照れたように笑った。

「いいよ。夕凪がそれがいいなら。」

「ふふっ
ゆっくん。」

私が呼ぶと、また瀬崎さんの手が腰に回った。