嘉人くんは、「美味しいもの」に、反応する。

「お寿司でもいいの?」

「いいよ。
じゃあ、おばあちゃんに電話しよう。」

瀬崎さんはそう言うと、電話を掛け始める。

しばらくして、お義母さんとお義父さんが車で迎えにきて、嘉人くんを連れて出掛けた。

途端に家中が静けさに包まれる。

「夕凪、大丈夫か?」

瀬崎さんが私の横に座り、腰を抱き寄せる。

「えっ? 何が?」

「なんか、煮詰まってただろ。」

えっ?
隠してるつもりだったのに、瀬崎さんは気づいてたの?

「うん、大丈夫。」

私はそう答えて、笑顔を作る。

「夕凪、無理するな。
仕事の愚痴も、吐き出せるものは吐き出せば
いいから。
異動したばかりだし、大変な事も多いだろ。」

そうは言っても、学校の内情は話せない。

「うん、すっごく大変。
なんで私が!?って思う事もたくさんあって…
でも、大丈夫。好きでやってる仕事だし、
これを乗り越えられたら、きっと自信も
付くし、東京でも頑張れる気がするから。」