今日も猛暑だったけれど、夕暮れの山間部は風が心地よかった。

風がダムの上を渡ってくるからかもしれない。

車を降りた途端に、嘉人くんに手を取られて、嘉人くんを挟んで瀬崎さんと3人で手を繋ぐ。

これって、なんだか親子みたい。

真ん中の嘉人くんは、繋いだ手をブンブン振ってご機嫌な様子。

「嘉人さん、楽しそうね。」

思わず、私が声を掛けると、

「楽しいもん。
夕凪先生は楽しい?」

と嘉人くんに聞き返された。

「楽しいよ。
先生、ここ初めて来たし。」

「そうなの?
パパに言ったら、いつでも連れてきて
くれるよ。
そうだ!
今度は海、行こ?
ね、先生!」

嘉人くんは、目をキラキラさせて言う。

「嘉人さん、ごめんね。
先生は、嘉人さんだけの先生じゃないから、
それはできないんだ。
今日は先生のお家に帰る途中でちょっと
寄り道をしただけ。」