「おい。」




こうなることを見越して。




強く握られたレイナの手は緩められ


その手を俺はもう一度握って離した。





「ここ通りたいんだけど」





「あ?じゃあ返してもらおうか」




「リク…?」






そう愛おしそうに呼ぶレイナ。


返して…か。




俺はこの一年

レイナが俺のところにいたと思えたことはない。


もちろん一緒には暮らしてたけど

心がどこにあるかそれは分からなかった。






なのにこいつは平気で返せとか

まるでお前のものかのように。

そんなに自信があるのか。







「レイナ。


行け」




「トウマくん?」




俺はレイナをバイクから下ろした。



神宮寺もこんな簡単にって顔。



簡単なんかじゃない。


俺がどれほどお前を殴り殺したいか。


でも、レイナの顔は

俺と神宮寺が前みたいに喧嘩しないか心配する顔。







(ポンポン)


俺はレイナの頭に手を乗せたまま話した





「そんな顔すんなよ笑

いままでごめんな

返してやるよ…」




「トウマくん?」




泣きそうな顔。


別にそんな顔させたいわけじゃないのに。




俺はレイナの背中を押した。




心配そうにこっちをみながら

連れられてくレイナ。


いや、連れられじゃないか。


俺の勝手な解釈だ。