20××年8月

「朱里。」

そいつはいつものようにどこからともなく私の部屋に現れる。

「颯太、また来たの?」

私が颯太と呼ぶその男は、昔から家が隣同士の足立 颯太。
世で言う幼馴染。

「暑いからさ」

「私の部屋に来る口実になってない」

「エアコン代が1部屋分浮くんだから得だと思ってりゃいいの」

まあそれもそう、と、これもまたいつものように言いくるめられる。

そうとはいえこの状態が続かれると私だって困るんだよ。

颯太は気付かずに私の部屋で涼んでいるけど、私は中学2年生のときに颯太への特別な感情を抱いてから早3年、未だにその気持ちを消化できずにいる。

「好きなんだけどなあ」

「ん?お前もこのゲーム好きなの?」

私の声に反応した颯太が見せてきた携帯画面には新作のゲームが。