「お疲れ様ですー真田先生どうしたの?」
私は下からぐいっと顔を覗き込んだ。

「あ、美園先生、さっき電話で聞きました。ビックリしましたー」
妙に慌てふためく真田先生。

「ね、私も本当にビックリしたよ。まさか奥様が穂乃香さんの妹さんだったなんて」
私は目を真ん丸にして答えた。

「あ、真田先生さぁ、そう言えば旧姓は何なの?」

「北山です」


「奥様とはどこで知り合ったの?」
何気なく探り始める私。

「高校生の時から、ずっとくっついたり、離れたりしながらで……結局、婿養子になるという条件で、結婚しました…家は兄がいるんで」


「そうなんだ。ご両親は健在?」


「いや、母親は僕が高校生の時に病気で亡くなりました」
少し悲しい思い出が出てきてしまったようだ。

「そうなんだ。大変だったね」
まぁ、私は2歳から1人だったけど。


「この塾で何が一番やりたい?」
話題を変えてみた。

「早く塾長に今はなりたいです。そして社長の戦力になりたいです」



その時、真田先生の動いていた手がピタリと止まった。


しまった!
私、色々聞きすぎた?
やばい…




「こんにちは。いつもお世話になります」
生徒の保護者が元気よく入って来た。


「こんにちは。真田先生お願い致します」


私はそう言い残し、そそくさと2階へと上がって行った。