「もう……わかりました。頑張ってみますね」

「楽しみだ。さあ、紅茶を飲もう」


メアリがソファに腰を下ろすと、側に控えていた侍女が用意していたティーカップに紅茶を注いでいく。

透きとおった黄金色の紅茶がメアリの前に置かれると、高貴で清々しい香りが鼻をくすぐった。

王はティーカップをソーサーと共に手に持つと、湯気の立つ紅茶の香りを堪能する。


アクアルーナ王国の国王。

その本名はメイナード・ローゼンライト・アクアルーナという。

最愛の王妃マリアを亡くしてからも新しい妃を娶ることなく、自国の為に日々尽力しており、民からの信頼も厚い人物だ。

そんな偉大な王の力に僅かでもなれればと願いながら調合した薬をメアリはテーブル越しに王へと差し出した。


「二十日分になります」

「ああ、ありがとう。今回もメアリが作ってくれたのか?」


王はティーカップをテーブルに戻し、代わりに紙袋に入った薬を受け取って微笑む。


「はい! 薬草を専門にしている商人さんが城下町のはずれの宿に滞在していて、ジョシュア先生の代わりに仕入れてきたもので作ったんです」

「城下町のはずれまで? メアリひとりでか?」

「はい」


メアリが頷くと、優しげな王の双眸が訝しげに細まった。