お昼を食べ終えて、
貴子に断りを入れて別れる。


私は図書室へと足を運んでいた。


相変わらず埃っぽい。


その空間が私は好きなのだけれど。


珀の小説を見つけた書架に目をやる。


背表紙に指を添えて一つ一つ触っていく。


その指先に「杉内珀」の名前を探して。


〈何してるんだ?〉


「あなたの本を探しているの」


〈なんで?〉


なんでだろう?
私は珀の本を探している。


もっと読みたいと思ったの。


珀が他にもどんな本を書いていたのか気になる。


誰も借りていないのか、
この書架に収まっている本は少し埃を纏っている。


まあ図書室なんて本を借りにくる子なんかは
みんな漫画本を借りていくことのほうが多いから
仕方ないよね。


私が借りていった場所だけが、
埃を取り除いたみたいに綺麗だった。


「ない……」


ポツリと呟いた。


どこをどう探しても「杉内珀」の名前が見つからない。


目を凝らして見ても見つからない。


どうしたものかと唸ると、
珀はにやりと笑った。


〈そういう時は本屋に行けばいいだろう〉


「本屋まで行くの?」


〈なんだよ。ダメなのか?
 お前はこの俺が必死で書いた力作を
 お金もかけずに読もうって言うのか?あ?〉


「わ、わかったから!そんな目で見ないで!」


珀はじっとりとした目で睨んだ。


確かに、お金をかけずに読むっていうのは失礼かと思う。


せっかく書いたんだもの、
手に取って読んだほうがいいよね。


でも、お金がなぁ……。


財布の中にいくらあったかと頭の中で思い浮かべて、
私は決心した。


仕方ない。本屋さんで探すか。