「邪魔だ」


急に体が浮く感じがする。

閉じていた目をそっと開ける。

いつもより視線が高い。

床には女性店員が倒れている。

側にはフラシアさんが信じられないモノを見る目で立っている。

その目線は自分の襟首あたりを掴んでいる人物・・

「ラディルさん・・」

昨日と全く同じ言葉で登場したラディルさんだった。


「フラシア。俺は面倒事を起こすなと言ったはずだが」

とっても不機嫌な声。

「・・・・ごめんなさい。これは私の落ち度だわ。狂うっていう意味を理解してなかった」

俯くフラシアさん。

快活な表情が陰ってる。



違う!

フラシアさんのせいじゃない!

だって

だってこれは・・



「違います!」

顔が何かに濡れる感じがする。

前がよく見えない。

だけど言わなくちゃ・・・


「ごめんなさい・・一緒にいちゃいけないのに・・・だけど嬉しかったの。おじいちゃん以外で初めて誰かと買い物したの・・・なのに、ごめんなさい。私はまた」

狂わせてしまった。






最後まで言えたかどうかは分からない。

暗闇が迫ってきて私は・・



何も分からなくなったから。

だけど声は聞こえた。

私の名前を呼ぶ二人の声が・・・









†††††