「…ん」
眼を覚ますとそこは先生の腕の中で。
そぉっと顔を上げると、まだ眠っている先生が小さく寝息を立てていた。
きめ細やかな肌、長い睫毛、柔らかな髪。
今はこんなに繊細で可愛く見えるのに、昨夜の先生は全く違って、いつになく激しく熱っぽかった。
それでも先生はやっぱり優しくて。
「『そんなつもり』じゃなかったから何の準備もないから…」と、時折苦しげに何かに耐えるような表情をしながら、それでも強引に行き着く先まで連れて行くことはしないでただ私に触れるばかりで愛してくれた。
そして私はそんな先生が堪らなく愛おしくて、その甘やかな手触りにうち震えるんだ。
(って!何思い出してるんだろう私!!)
朝っぱらから変な動悸が身体中を駆け巡り、発火しそうなほど頬が火照る。
(…起きよ)
本当はもう少し先生の体温に微睡んでいたいけど、もう朝みたいだ。
そっと先生の腕から抜け出そうとする。
「う…ん…」
起こさないように静かに動いたつもりだったけど、先生が薄く眼を開けた。
「舞奈…」
吐息混じりに私の名を呼ぶ。そして、
「あ…!」
ぐいと抱き寄せられ、もう一度腕の中に閉じ込められた。
(うわぁ…!)
吐息が、近い。嫌でも昨夜のことを思い出してしまって、ますます胸を高鳴らせる。
不意に先生が私の脚に脚を絡める。
(えぇっ!ちょっ…!!)
「だっ、駄目だよ!先生もう朝だよっ!!」
「え…?」
先生は腕を緩めると、とろんとした顔で私を見た。
「え…あ…あぁ…」
意識がはっきりしてくるに従って、みるみる先生が頬を紅くする。それを見て、私の頬もどんどん紅くなる。
「…おはよう南条」
「お、おはようございます…」
(眼合わせらんない…)
身を固くして縮こまる。
「あのさ…」
「は、はいっ!?」
「大丈夫、だった?」
「え…?」
「あ…身体、とか」
「あ、あぁ…はっ、はい」
「そっか…なら、良かった」
「……」
「……」
(うゎぁ…恥ずかし過ぎてぎこちないのがますます恥ずかしいよ!)
私の二の腕に遠慮がちに触れたまま固定された先生の手もどこか余所余所しい。
「…朝飯用意しとくから、出掛ける準備してきなよ」
少しの間の後、照れ臭そうに微笑んで先生は半身を起こす。
それから、優しく私のおでこにキスをひとつ落として、部屋を出て行った。