食事の後ふたりで片付けを始めたところで、先生が言った。

「風呂入ってきなよ。またお湯止まるといけないから俺待っとくから」

「あ…うん。ありがとう。じゃそうするね」


 バスタオルとルームウェアを持ってバスルームに向かう。


(お風呂上がりに先生が待ってるとか…どうしよう!ドキドキしちゃう!)


 バスタブに浸かると冷えた手足がほわほわと解けていく。
 先生がいなかったらきっとお湯は出ないままで今頃こんな風にお風呂には入れなかったかも。


 心地よくお湯にとろけていると今日一日のことが頭の中を巡る。

 雪景色の車窓、思いがけない先生との再会、新婚さんみたいに辿る家路、それにキスの余韻も─


(あ、駄目…のぼせちゃう…)


 お風呂から上がってシャーベットカラーのふわふわのルームウェアを着る。髪を乾かしてリビングに戻ると、先生はテレビで雪のニュースを見ていた。


「あ、上がった?」

「うん、ありがとう。どう?雪」

「一応電車は動いてるみたいだな」


 ニュースに視線を向けたまま先生が立ち上がる。

「明日また来るよ」

 ダウンに袖を通しながら言う。


『各線とも徐行運転、間引き運転を行っており、大幅な遅延が…』

 雪が線路に吹き付ける映像と共にテレビが伝えている。


(大丈夫かな、先生…)


 壁に掛かる時計は既に10時を回っている。
 順調に帰れても先生が実家に着くのは12時近く。明日の朝も来ると言ってくれているけれど、そうするとどれだけ休めるだろう…?