─いや、重ねようとした時。
ピンポーン…
「!!」
「!!」
室内にチャイムが響いた。
「え…誰?」
「俺が出るから、南条は先に家上がってて」
先生に促され部屋に上がり、玄関に通じるドアを閉めた。
「あれ!?なんで昴さんがいるんすか!?」
玄関を開ける音に続いて、男の人の声が聞こえてくる。
「お前こそ何しに来たんだよ?」
「俺は夜璃子さんから受験生が泊まりに来るからガスとかエアコンとか見てやってくれって言われて。
昴さん仕事どうしたんです?英語の先生になったんじゃなかったでしたっけ?」
「……
…仕事の一貫だよ」
「あっ!もしかして受験生って昴さんの教え子っすか!?うゎー!じゃあ激励くらいしますから会わせて下さいよ!」
「いや、いいよ…」
「なんでっすか?応援させて下さいよ」
(あれ?これってお会いした方がいいのかな?)
私の為にわざわざ来て下さったんだものね。
私はそっとドアを開け、隙間から顔を出す。
先生の向こうに立つひょろっと背の高い茶髪の男の人がすかさず私を見つけ、「あれっ?」と声を上げた。
「女の子じゃないですかぁ!しかも可愛いっ!」
「あっ南条!出てくるな!」
(え…?出ちゃまずかった?)
「いやぁ!昴さんの教え子ちゃんですかぁ!
あ、俺この先の大学の工学部3年でここの1階に住んでる半田といいます!よろしくねっ」
「おい、勝手に自己紹介するな」
「あ、あの…南条舞奈です」
「南条もするなって!」
「舞奈ちゃん?可愛い名前だね!よろしくね舞奈ちゃん♪」
「馴れ馴れしく名前で呼ぶなよ!」
先生が私を後ろ手にぐいぐい押して部屋へと追いやる。
「なんすか昴さん!って、えっ?もしかしてまさかの付き合ってるとか!?」
「うるせぇな、用が済んだなら早く帰れって」
「ちょっ!昴せんせー、駄目っすよ!教え子に手ぇ出しちゃあ…あ、ちょっと!」
今度は半田さんを玄関から追い出しにかかる。
「昴さん!俺ガスとエアコン見に来たんだからー。ほら、工学部だし!」
「今時ガスもエアコンも工学部じゃなくても使えるっつーの!おら!帰った帰った!!」
「ちょ…舞奈ちゃーん!試験頑張ってねー!」
半田さんが寄り切られ、ドアがガチャンと閉まる。