仁科先生が言ってた。

『お前がホントにヤバい時はアイツが必ず守りに来るってことだから。安心しろ』

って。


「嬉しいよ、先生に逢えて」


 見つめ合い、微笑み合うこの瞬間が懐かしい。

 寒いし電車も止まって困るけれど、

(雪、ありがとう)

って今は思う。


『1番線、発車致しまーす!』

 発車音が鳴ると、駆け込む人たちにぐいと押し込まれる。


「あ!」


 先生は私を抱き留め、私を守るみたいに肩に腕を廻して抱き寄せた。


「ここなら撮られることもないし、どこでもこうしてられて良いな」

「え?」

「いや、何でもない」


 大都会の真ん中を流れる川も今日は冷たく凍って、春には花を降り散らすだろう桜の木々も寒々しい樹氷になっている。


「先生の家は東京のどの辺り?」

「ここから近いよ。でも最寄りは地下鉄だから沿線が全然違って、大学までは乗り換えもあるし、少し遠回りだな」

「そうなんだ?東京って複雑だね。私大丈夫かな?」

「ははっ!初めはナビ見ながら、そのうち慣れるよ」


 先生は優しく笑う。


「それに、」

「?」

「南条がこっちに住んだら俺もしょっちゅう来るつもりだし。案内するよ」

「ホント!?」

「あぁ。いっぱいデートしよ?今まで出来なかった分」

「うんっ!」


 私は先生の肩に顔を押し当てる。

「あっ、おい!」

なんて言いながら、それでも先生は私の肩に廻した腕にぎゅっと力をこめて抱き締めてくれた。


 混み合った車内ではその距離感も決して不自然ではなくて。

 私たちは離れていた一月の時間を埋めるみたいに、寄り添いあってこのひとときを過ごした。

           *