「…まず、これ見てくれ」



木元さんはそう言って、スマホをいじった後、その画面を俺に見せてくれる。



その画面には、一枚の写真が。

学ランを着た少年の写真。

よく見ると…うわっ。だいぶレベルの高いイケメンだ。

J系美少年、といったところだ。



「…それ、高村さん」

「…えっ!」



このイケメンが…あおこさん?!



「それ、一年の時の学祭のステージバトルの写真なんだって。高村さん、男装してステージに出たんだ」

「………」

絶句だ。男装にしては、完成されすぎている。

男子そのものだ…!



そして、この学ラン男装のステージが、悲劇の始まりとなる。




「…女子たちが『カッコいい!』とか『マジ神!』とか騒いで騒いで凄かったらしい…。それで、女子たちが男子のコンテストにも関わらず、ルール無視で高村さんの名前を書いて投票しちゃったんだって」

「えぇっ!」

「投票数が凄すぎて無視できないくらいだったらしい。で、女子なんだけど、彼女がミスターに」

「えぇっ!」

「で、高村さんの人気は止まることを知らず、写真出回るわ、ファンクラブ出来るわ…女子限定のファンクラブの会員数、述べ300人」

「女子だけで300!…それって、うちの学校だけじゃ…」

「最年長40歳、最年少10歳。他校にもゴロゴロいた。学校ごとに支部が出来るぐらい。で、本校のファンと他校のファンがケンカしてた…」

「支部!ケンカ!」

…救急車来校のエピソードはそこか。

「…で、彼氏が出来ると急に女っぽくなっちゃって…そこで男子のファンも急増。結果、老若男女問わずのアイドルとなりました」

「………」

「空手だかやっててケンカも強いんだよ。ちなみに大河原、藤ノ宮と嵐の件で、高村さんに腹にスピニングバックキックぶちこまれてる」

「………」



唖然だ…もう、言葉も出てこない。



俺が入学する前に、この高校にそんな拗れた事情があったなんて。

大河原さんにスピニングバックキック?

その話、詳しく聞きたい…じゃなくて。



…あぁ、そうか。

いろいろ話が繋がってきたぞ。



学祭の時、糸田先生が彼女の来訪を口止めしてきたこと。

昨年までのミスターが来てりゃ、そりゃあ大騒ぎになるよな。

狭山たちが、彼女の来訪を知って、俺に詰めよってきたこと。

自分たちの主がお忍びで来てたんだ。そりゃあ怒るよな。



…何だこれ。