電話を終えたのか、スマホを木元さんに渡している。
「…じゃあ、私はこれで。これからパン屋さん寄って帰るんだ」
「…あ!ちょっと待ってちょっと待って高村さん。三橋さんとはどうなってるんですか…」
「あ、私達、別れたの」
「別れたのって!…いやいや、三橋さんの話、聞いてあげてくださいって!話は聞いてますよ!」
「もう話すことなんてないよ。だって別れたもん。もう終わり。さよなら」
「いやいやいや。終わってないでしょ?向こうは未練たっぷりでしょ?話ぐらい聞いてあげても…」
「もういいの。じゃあね」
「…あっ!ちょっと!高村さん!」
彼女は逃げるようにして、俺や木元さんのもとを去っていった。
すたこら逃げてしまった彼女に、木元さんはため息をつく。
「あーもう…そんな状態で別れちゃダメですってば…後で三橋さんに電話しとこ…」
…そうだ。
確か、彼氏に浮気疑惑があるって学祭の時に言ってたな。
糸田先生、お怒りだったけど。
とうとう別れてしまったのか?
すると、木元さんが「あっ」と声をあげる。
「どうしたんすか」
だが、そこで徹底的な一言が…。
「そういや、新旧ミスター御対面の瞬間だったな。俺、凄い瞬間に立ち会っちゃった」
…何っ!
や、やはり…!
「き、木元さん…どういうことなんですか?」
「…ん?何が?」
「何が?って!…だって、うちのはミスターコンテストですよね?ミスコンテストじゃないですよね?ね?ミスターコンテストだから、男子のコンテストですよね?!選ばれるのは男子ですよね?!」
「ど、どうした急に!」
「だってあの人、女子ですよね?!…なのに、何であの人なんですか!ねえ!ねえ、木元さんっ!」
「お、落ち着け!説明してやるから、落ち着け!」
不覚にも興奮してしまった。
ちっ。あり得ないことが起きてるぞ、星天高校。
…あの、先代ミスターは。
狭山たち残党や、二村さんが崇拝して止まない先代のミスターは。
俺のことを気遣って、在校生である狭山たちにミッションを言い渡して卒業していった、先代ミスターとは。
あの…あおこさん。
…もとい、高村碧子さん。
女子だった…?!
男子のコンテストに、女子が優勝?
何で、女子が乱入?
なぜ…!
…と、いうのを木元さんに説明してもらう。
興奮する俺を宥めるように、木元さんは丁寧に説明してくれた。