『小便器、綺麗ですね。ピカピカ』
この人…桃李の近所のお姉さん。
学祭で、男子トイレに入ろうとした。
あおこさんだ…!
木元さんと知り合い?
…って、去年までうちの生徒だったんだ。知ってるか。
木元さんはなぜか挙動不審MAXだ。
何でそんなにあわあわしてるんだろう。
「た、高村さん!ここで何して…」
「今日は仕事お休みだからお買い物してるの。木元くんは?」
「あ、俺はちょっと、優里沙待ってる間に後輩とお茶してて…」
「へぇー。坂下さん、元気?」
「元気ですってば!…あ、優里沙に連絡します!高村さんここにいるって聞いたら、アイツ走ってやってきますよ!」
「もう帰るからいいよ」
「いや、でも電話!」
木元さんは慌ててスマホを取り出し、電話をしようとしている。
その光景を呆然と見ていたが。
その超美人・あおこさんの視線がこっちに向いているのに気が付き、思わずビクッとしてしまった。
美人よ。こっちを見るんじゃない。
何か知らんがドキドキするだろが…!
「ミスター竜堂くん」
「…ん?…はぁっ?!」
今、この人…俺をミスターって言ったな?
俺がミスターって、知ってる…なぜ?
すると、あおこさんは静かにふふっと微笑む。
「…竜堂くん。私の可愛い可愛いデビル達はどう?役に立つでしょう?」
「…え、は?」
「これからもきっと、力になってくれるはずだからね。頼ってね」
え…。
デビル達って…。
『やあ、みんな久しぶり。先代ミスターの可愛くて悪い悪いデビル達?』
え…えぇっ?!
私の可愛い可愛いデビル達…って、言ったよな?
私の、って…?
…じゃあ、この人は!
でも、この人…!
予想を遥かに超えた事実に、思考停止し、ごちゃごちゃになった。
フリーズしてしまうと、彼女は木元さんに呼ばれ、俺の前から離れていく。
木元さんから電話を受け取って、話していた。
「…もしもしお久しぶりです。…あ、うん。イオンにいるよ?…え、いいのいいの。お仕事忙しいんでしょ?…まあまあ今度現場研修で会えるから…」
テンションのアップダウンがなく、淡々と話してる…。
いや、この人。
まさかな。でも…いやいやいや。
だって、この人…。
謎が謎を呼ぶ。
なかなか難題だ。