(ちっ…)
俺に興味ないのは、わかってんだけど。
何かムカつく。
あの状況で『は?全然お似合いじゃないけど?』みたいなことを言うキャラじゃないことをわかっていても。
すげえ、ムカつく。
イライラしながら、早足で家へと足を向ける。
『夏輝くーん!待ってー!』
里桜が走って追いかけてきた。
イライラが止まらないので、無視して歩く。
しかし、里桜に後ろから腕を掴まれ、足を止められる。
『…何だよ!』
『これでわかったでしょ?桃李ちゃん、夏輝くんのこと何とも思ってないんだよ?』
『うるっせぇな!』
『里桜はこんなに夏輝くんのこと好きなのに。里桜だったら、夏輝くんをこんなに悲しませるようなことしないよ?』
『………』
『夏輝くんが辛い思いしてるの、里桜、見てられない…里桜なら、桃李ちゃんのこと忘れさせてあげるよ?』
そして、腕をギュッと抱き締められる。
『里桜、夏輝くんのこと大好き。夏輝くんも里桜のこと、好きになって…』
不覚にも、ちょっと可愛いと思ってしまった。
…そうだよな。
報われないのに想い続けて。
腹を立てたり、傷付いたり、落ち込んだり。
自らあえて、こんなに辛い思いするより。
自分を必要としてくれる人の傍にいる方が、幸せでいられるかもしれない。
『…わかった。好きに…なるよ』
目の前の辛い現実から逃避してしまい、楽な楽な方へと行ってしまった。
そうして、俺達は恋人として付き合い始めた。
…の、だが。
現実は、甘くなかった。
いや、どこでも手を繋いで歩いて一緒にいたり。
人の目を盗んでは、里桜にねだられるままどこでもキスしたり。
…端から見たら、超甘い生活をしていたが。
この女。とんでもない。
スマホの連絡は、常に絶えず。
登下校は常に一緒。
男友達と遊ぶから今日は会わないと言い出したものなら、それは誰だ、女はいるのかと怒り出す。
おかげで、友達と会えない。
友達、いなくなった。
サッカーの練習があると言うと『今日はサボってよー。里桜と一緒にいてよー』と、言い出す。
これにはさすがに激怒させてもらった。
…ようするに、束縛女。
最初は『よほど俺のことが好きなんだな…』と、思っていたが。
そんなことが続くと頭にくる。
結果。
最初の数日で、気持ちは冷める。
好きじゃなくなった。