「…あとさー。桃李、自分でハードル上げてる」
え?
両手を顔から離してしまった。
そのセリフにニヤケも止まってしまった。
「ハードル…」
「夏輝の隣にいるには、それなりの高い基準を越えないとダメだって思ってる。恐らく」
「基準?何だそれは。オーディションでもあるまいし」
「自分で勝手にオーディションしてんじゃない?…まあ、桃李は、夏輝の歴代の彼女たちを見てるんだよ?」
俺の歴代の彼女たち…。
「…どんな誰と付き合ってたか、もう忘れたわ」
付き合ってた女がいても、結局桃李に掻き消されて終わってんだ。
顔見たら思い出すかもしんないけど、今思い出して下さいとか言われたら、それは無理だと思う。
「…えっ。ひどい男だ。まあ…夏輝の歴代の彼女って、だいたい美人でオシャレなモデルみたいな女子が多かったよね」
「そう?」
「うん。で、身長は低くない。里桜も古嶋も、その他の女子も、嵐さんもみんな160越えしてた」
「…そう?っつーかあの女豹を数に入れるな」
「みんな桃李とは真逆のタイプだ。…で、きっと自分と比べてんだよ。そして『私なんてちんちくりんだし…』と、劣等感のループにハマってる」
「………」
《だって、こんな天パ眼鏡でちんちくりんだし…》
…あれは、天パ眼鏡をやめました。を忘れてたワケではないのか?
《他人と比べない》というページに付箋を貼っていたけど。
自分と誰かを比べてたっていうのか?
(………)
そんなとこまで…。
「…どうした?」
「い、いや…」
昔の記憶を頭に過らせて、無言となってしまった。
「…とりあえず、そんなもんいちいち見なくていい。俺の中ではあいつがオーディション優勝なんだから」
「俺も実際、その面子と比べて桃李が一番美少女だと思うけど。じゃあそう言ってやってよ」
「………」
おまえが一番かわいいよ!ってか?
実際そう思っていても、そんな恥ずかしいセリフ、堂々と言えるワケないだろが!
また死にそうな思いさせる気か!
…でも、死に物狂いでこれから話をしに行かなきゃいけないのは、確かなんだけど。
「…あ。そうだ理人」
「何」
俺としては、死にそうなくらい恥ずかしいんだけど。
でも、あえて死にそうな思いをしてでも、聞きたいことがあった。
「…桃李って、いつから俺のこと好きだったの?」
「………」