私、本当にこの人、苦手だなぁ。
いくら顔が良くても仕事ができても、女性に対して不誠実な人は好きになれない。それに加えてその軽さ――自分のカッコよさを分かって上で、女なら誰でも落とせると思っているところ。
ほんっとおおおに、無理!
というのが顔に出ていたのかな、彩さんはクスクス笑って、私の肩に乗ったままの大河原さんの手を払いのけてくれた。
「もうー会社の子に手を出すの、やめなよ」
「逆だな。周りの女が俺を放っておかねぇーの」
「またまたそんなこと言ってぇ。今、女の子と揉めてるの、耳に入ってるわよ」
「ん? どこの子の話だろ」
「孕ましたとか、孕ましてないとか! どうしてそう節操ないの。避妊ぐらいしなさいよ」
あのー、ちょっと彩さん? 声が大きすぎます!
それほど広くないお店の中、他のお客さんが何事かとチラチラこちらを見ているし、カウンターの奥にいる店員さんも困ったような顔をしている。
というか、ランチ時にする話じゃないですからね?
私たちはもう食べ終わったし、戻りましょうと言おうとしたけど、それより先に大河原さんが呟いた言葉に、私は耳を疑った。
「あぁ……あずの話ね」
え?