「ね、もしかして紗夜ちゃんって貴司のこと好きなの?」
「はい、大好きです」
「あらま!」
言っておいて損はないので素直に認めると、彩さんは嬉しそうに目を細めた。
大ぶりのピアスが髪に引っかかったのか、直す仕草が色っぽい。
そこで、ふと。
水瀬さんはどんな女の人がタイプなんだろうと考えた。
「じゃぁ、これ、紗夜ちゃんには言っていいかな――――…」
彩さんが勿体付けたように言ったその時、洋食屋のドアが開くカランコロンという音がして、外の騒がしさと共に数人のサラリーマンが入って来た。
オフィス街の中にあるこの店で、スーツ姿はさほど珍しいものではないけれど。
その中に1人と目が合った瞬間、思わず「あ!」と声を出してしまった。
「大河原さん……」
「おー高木さんに、深町? 珍しい組み合わせだね」
「そういうそっちも、野郎ばっかでランチなんて珍しい」
「今、口説いてる子がなかなか靡いてくれなくてな」
悪びれずに言う大河原さんは、明らかに私を見ている。
一緒に来た男性たちに手でジャスチャーした彼は、空いていた私の隣に腰を下ろした。その際に、肩に触れられ、またまたぞわりとする。