そんな仕事の心配とは別の問題が発覚したのは、本社の方で用意してもらったビジネスホテルに入った後だった。

疲れただろうから今日はゆっくり休んでくださいと鍵を渡され、ベッドに転がったものの眠れるはずがない。

だって!

壁一枚隔てた向こう側に、水瀬さんがいるんだよ?

これは、襲いに行っていいってことでしょうか。




「おはよ、よく眠れたか」

「はい、もうぐっすり……」

「それは良かった、早く食べないと置いて行くぞ」


おかしいな、昨日はいつの間にか眠り込んでいて、気が付くと太陽の光が窓から差し込んでいた。

うっかり寝ちゃうなんて私のバカ!

でも、チャンスはあと1回ある。今夜こそ必ず!

慌てて着替えを済ませて、1Fにある食堂に向かったら、すでに身支度を整えた水瀬さんが新聞片手に珈琲を啜っていて、彼の前には私の分の朝食が並べられていた。

ちなみにここのホテルではバイキング形式になっており、自分で取りに行かない限りテーブルに食べ物が並ぶことはない。つまり、水瀬さんが私の分も取りに行ってくれたってこと……?


「いただきます」

「昨日は、どうだった?」


ん! ここの目玉焼き、美味しい!


「退屈でした。なので脱走しました」

「らしいな。さすが俺の部下だって太田に言われた」