ニコッと笑いかけられ、ぞわりとした。
固まっている場合じゃない、この人、女の敵。
この笑顔に騙されちゃダメなんだよ。
「今日、飲みにいかない? 俺、結構大阪に詳しいんだ。案内するよ」
「いえ、遊びに来てるわけじゃないので」
「固い事言うなって。店が嫌ならホテルで飲む? 今日、どこに泊まるの?」
「まだ知りません。というか、本当に私はいいので、お断りします」
「そぉ、残念」
大河原さんは眉尻を下げて。
それでも気が変わったら連絡してと、名刺を私の手の中にねじ込んだ。
そのやり方が如何にも遊び慣れているようで、女性の扱い方なんか知ってますって感じで、嫌悪感しか湧いてこない。
だけど、本人の目の前で名刺を捨てるほど失礼はできなくて、上着のポケットの中へスマホと一緒に入れた。
「探しましたよ、どこ行っていたんですか!」
「すみません、ちょっと迷子になってしまって」
大河原さんと別れたあと、吹き抜けになっている階段を上っているところで太田さんに掴まった。
あらかじめ用意していた返答で難なく切り抜ける。
あぁ、でも探検ごっこはもう終わりかな?
残りの2日間、私は何をすればいいのだろう。